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2月2日音楽史講読「ノートルダムの音楽」 (東京)
The Renaissance king : FrancisⅠ  ルネサンスの王:フランソワ1世

p,217~ 
王室につながる諸侯たちはいつもガリア教会(ノートルダム)の一流のパトロンであった。とはいえ、大聖堂への彼らの寄付を比較してみると、大修道院や聖堂参事会教会を大きく超えることはなかった。彼らの贈り物はしばしば芸術的、音楽的、または土地やお金に加え精神的価値の形式を取ることもあった。豪華な時禱書で有名なベリー公ジャン(=1世、Duke John of Berry)は恐らく中世後期における芸術の最も著名なパトロンであるが、例えばノートルダムに使徒フィリポの頭を含む多くの聖遺物を入れる聖櫃を寄贈した。
1400年の記録に拠れば、ベリー公は大聖堂のオルガン改装費用の寄付を依頼され、またオルガン製作家のフレデリク・シャンバンツFedericus Schambantzを教会に仕えさせるため、6年間にわたりスポンサーとなった。そのすぐ後の1410年、ジャンの甥ブルゴーニュ公ジャン(1世、=無怖公Jhon the Fearless)は2,500リーブルをノートルダムに寄付したが、それはブルゴーニュ公家の先祖の(供養の)ためであった。
ルイ11世(在位1461~76)はその治世の間に、ノートルダムに多大な善行を積んだ。つまり、父(シャルル7世)が約束していた600リーブルに加え、自身の分として1,000リーブルを、また「ガブリエル」の銘がついた北塔の大鐘を作り直す材料と費用を寄付した。(→2013年、フランス革命以降初めて鐘が10個揃うこととなった。)ほかにも「聖アンドレアの腕」を安置するための新しい聖遺物入れを作るために502エキュを寄付した。このような莫大な寄付は無条件でなされたのではなかった。実際、それらの惜しみない寄付は大聖堂と宮廷にとって、お互いのより大きな見返りの言わば、交換条件であった。多くの場合、教会への寄付の最大の意味は、現世だけでなく来世についてもその奉仕の対価としてのものであった。宗教改革以前においてパリの大聖堂との関わりを持ったフランスのすべての君主たちの中でも、フランソワ1世(在位1515~47年)は宮廷と大聖堂との関わりにおいて、最も精力的に相互関係を築いた典型的な人物であった。

おそらく、フランソワ1世はフランス史上、最も傑出した君主の一人であり、その治世は二つの輝かしい文化、すなわちフランス・ゴシックとイタリア・ルネサンスの混在した時代であった。フランソワ1世はノートルダムの建物の外見自体にも影響を与え、また教会の組織そのものにも関与した。彼は即位して間もない若い頃、レオナルド・ダ・ヴィンチや画家のベンヴェヌート・チェリーニBenvenuto Celliniを宮廷に招聘した。またラブレーRabelaisのパトロンとなり、コレージュ・ド・フランスを設立(設立当初はコレージュ・ド・ロワイヤルCollége de Royale)した。彼はトルネをかけて英国王ヘンリー8世と戦い、また(選挙には敗れたが)神聖ローマ皇帝にも立候補した。イタリアに2回侵攻、新大陸へフランスの最初の探検隊を送った。フランソワ1世の精力的な活動と国王という地位は西ヨーロッパ全体に影響を及ぼし、各国君主はこれを念頭に置きながら外交戦略を考えることになる。その結果、フランソワ1世の家族の儀式だけでなく、主だったヨーロッパ王室の儀式は首都パリの大聖堂で同盟国・敵国を問わず、様々な儀式(外交儀礼)が行われた。フランス王室関係では、先王ルイ12世の葬儀(1515)、フランソワ1世の最初の妻クロード※1の葬儀(1524)、フランソワの母ルイーズ・ド・サヴォアの葬儀(1531)などである。もっとも遺体は伝統に従ってサン・ドニに運ばれた。対外的には、1537年、スコットランド国王ジェームス5世を迎え※2、また神聖ローマ皇帝カール5世と一緒にミサを行った。また彼は敵であった神聖ローマ皇帝カール5世が1519年に、英国王ヘンリー8世が1547年に、それぞれ亡くなった時に記念のミサを行った。
※1 クロード・ド・フランスClaude de France(1499 – 1524)ルイ12世の王女。
※2 この年、フランソワ1世の王女マドレーヌMadeleine of Valoisとの結婚が大聖堂で行われた。

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by fonsfloris-k | 2013-02-02 10:00 | 講座レポート
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