2015年度グレゴリオ聖歌入門【後期】 第3回
【総括】 ・今回は哲郎先生の回でした! ・前半は、ミサで歌われる通常唱 (つうじょうしょう) の中からキリエとグローリアを歌いました。また、これまで学んでいる入祭唱《Ecce advenit》を軽く復習し、「入祭唱→キリエ→グローリア」というミサの実際の流れに即して続けて歌ってみました。 ・後半は、アレルヤ唱《Vidimus stellam》を学びました。 【前半】 ○ミサ通常唱 ・キリエやグローリアは、「ミサ通常唱」と呼ばれます。通常唱と呼ばれるのは、あらゆるミサにおいて「通常」唱えられる文(典礼文)だからです。つまり、“Kyrie eleison.” “Christe eleison.” といった文は、ミサにおいて通常唱えられるものなので、「通常唱」と呼ばれるわけです。 ⇔一方で、入祭唱やアレルヤ唱は「ミサ固有唱」と呼ばれます。入祭唱などで唱えられる典礼文は各ミサによって固有のものなので、固有唱と呼ぶわけです。つまり、“Ecce advenit…” という文は「主の公現のミサ」に固有のものであり、このミサでしか唱えられない、ということです。 ・今回配られたのは、「第4ミサ・使徒の祝祭日」で歌われるキリエとグローリアです。注意ですが、キリエやグローリアはあらゆるミサで通常唱えられる「文」ではありますが、「旋律」はミサによって異なりますのでその点は理解しておくと良いと思います。 ○キリエ ・キリエは第1旋法。フィナリスは「レ」、ドミナントは「ラ」です。この2つの音を感じながら歌うことで旋法の特徴が出てきます。ただし、このキリエには最後が「ラ」で終わるフレーズがあるため、第1旋法とはいえ少し特殊になっています。 ・歌詞の途中に “bis” とありますが、これは「2回」という意味。1960年代の第2バチカン公会議以降の現代のミサでは、各フレーズを2回繰り返します。ただし、中世以来それまでの伝統では「3回」繰り返していました。そして、聖歌隊を2つのグループに分け、繰り返すたびに交互に歌うのが習慣でした。 ・始めのアスタリスク(*)までは先唱者が歌います。3段目、*の所で聖歌隊を交替し、**以降は全員で歌います。 ○グローリア ・グローリアは第4旋法。フィナリスは「ミ」、ドミナントは「ラ」。キリエの第1旋法はフィナリスとドミナントの関係が5度でしたが、グローリアの第4旋法では4度の関係となります。 ・特に何も書いてありませんが、“Gloria in excelsis Deo.” は先唱部分です。("Deo” の後に「*」を入れておくと良いでしょう。) ・グローリアも2つのグループで交互に歌います。楽譜の複縦線(縦に2本線が入っているところ)で交替します。 ・グローリアはいくつかの部分に分けられます。 →1.“…mus te.” の部分。(1ページの上から2~3段目。) 2.“Domine...” で始まる部分。(1ページ最後から2ページ上から3段目まで。) 3.“Qui…” で始まる部分。(2ページ上から3段目終わりから6段目まで。) 4.“Tu solus…” の部分。(2ページ上から6段目終わりから8段目。) ・2ページ1段目の “Deus Pater”、2段目の “Iesu Christe”、下から2段目の “Sancto Spiritu” に同じ旋律が使われています。父なる神 Deus Pater、イエス・キリスト Iesu Christe、聖霊 Sancto Spiritu が一体であるという三位一体を旋律的に表していると考えられます。また、各部分で同じような文を3回繰り返すことがあり、これも三位一体と関係していると思われます。 ・最後のアーメンは全員で歌います。 ○入祭唱→キリエ→グローリア ・伝統的なミサの流れでは、一番始めに歌われる「入祭唱」から続く形でキリエとグローリアが歌われます。前半の最後にこれら3つの聖歌を続けて歌い、ミサの流れを少し体験しました。 ~休憩~ 【後半】 ○アレルヤ唱《Vidimus stellam》 ・第2旋法の聖歌です。フィナリスは「レ」、ドミナントは「ファ」。 ・アレルヤ唱は、まず冒頭の “Alleluia” の小区分線のところまでを先唱者が歌った後、全員で一番始めから歌うのが習慣です。 ・冒頭の “Alleluia” 部分、「ファ」を大事に歌いましょう。ドミナントなので重要な音ですが、ネウマによってもそれを強調するようにエピゼマが付けられているところがあります。 ・2段目の “ejus” の “jus” の「ド」の音は、中休みをするような感じで。 ・“in” と “Oriente” の歌詞はつなげて、“inoriente”(イノリエンテ)のように発音しましょう。 ・“Oriente” のところで2回同じネウマが続けて出て来ますが、これは「プレッスス・マイヨール pressus maior」というネウマ。3つの音から成ります。ネウマの意味するところを音高に限って言えば、「始めの2音は同じ高さの音、最後の音は前の2つよりも下がる」ということを示しています。 ・プレッスス・マイヨールの歌い方として、2音目を装飾的に(少し声を揺らすような感じで)歌うのではないか、ということがネウマの研究によって推測されています。そのように歌うと、「オリエント」な感じ、東方世界の響きが聴こえてくるようで面白いですね!(笑) ・またここに出て来るプレッスス・マイヨールは、一番始めの音(レ)にエピゼマが付いていますので、それを少し長めに歌うと良いでしょう。 ・3段目 “te” のところには、 “cb” (celeriter bene チェレリテル・ベーネ) という指示文字があります。これは、「十分に素早く」という意味です。“bene” (十分に、大いに) という言葉によって、“celeriter” (素早く) を更に強調する狙いがあると考えられます。ここは重くならずにサラッと素早く歌いましょう。 ・この曲の中では3ヶ所でギザギザを伴うネウマ「クィリスマ quilisma」が出てきます。例えば一番最後の部分などです。ギザギザの前の音は長めに歌われるのが習慣なので覚えておくと良いでしょう。 ・一番最後 “Dominum” のところまで歌ったら、一番最初に戻り “Alleluia” 部分をもう一度歌ってからアレルヤ唱は終わります。 【次回 (12/19)】 ・次回はアシスタントの担当回となります! ★まず次回は場所が異なりますので、ご注意ください。【上目黒住区センター】(目黒区祐天寺2丁目6-6、最寄り駅は祐天寺)の【第2会議室】となります。 ・内容は、今回やりましたアレルヤ唱の復習と、その次のコムニオ《Vidimus stellam》の予習を行いたいと思います。時間がありましたら、ミサ通常唱の復習もしたいと考えています。 (K.W.)
by fonsfloris-k
| 2015-11-21 13:00
| 講座レポート
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