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11月26日 グレゴリオ聖歌入門(東京)
・配布資料:ページ9

・本日の講義
◇前半:ネウマの解説:4音のパターン
1)9 porrectus flexus 2)10 pes subbipunctis
3)11 scandicus flexus 4)12 torculus resupinus
(3&4の詳細については次回の講義にて)
◇後半:通常唱・4番のミサ、クリスマスの固有唱の練習

◇ネウマの解説
1)9 porrectus flexus (ポレクトゥス・フレクスス)
porrectus(3つの音から成る)に続く次の音が低くなる。
porrectusがflexus(傾く・おじぎ)する、という意味。
基本的には軽く流れるように。

a. 形はclivis が2つだが、同じ高さの音の繰り返しではなく、流れる音形の高さはいろいろ。
(GRADUALE TRIPLEX、p.256、1段目)
「天から突然音がして聖霊が降りてきた」と言う一節
so-nus(音)に付けられているSt.Gallen(ザンクトガレン)のネウマ(赤字)
指示文字Lは1音目をレガーテ(高くする)、あとは“c”(チェレリテル・軽く)する。
…指示文字が付いていなくても基本的に軽やかに。

(p.211、3段目)
Do-mi-nus のDoに付けられたSt.Gallenのネウマ(赤字)
上に付けられた指示文字は、1音目は“P”(ちょっと高く)、3音目を“L”(高く)

(p.213、8段目(一番下の段))
al-le-lu-iaのleに付けられたSt,Gallenのネウマ(赤字)
これは2音目と3音目が同じ高さだが、クリビスが2つと思ってよい。
同じ音形をただ続けるのでなく、2つ目を歌いなおす感じで。

b. エピゼマで後半を拡大するパターン(別写本で)
(p.207、7段目)
alle-lu-iaのleの上に書かれたネウマ

別写本では、porrectus(3音)+1音と分けて書かれたものもある。
St.Gallenのネウマ(赤字)の、最後が下に長くなっているのは最後の音が下に下がることを表している。
その脇に書かれた“i”の字はinferior(インフェリオール・低い)と言う意味。
二重に低いことを強調している。

上に書かれたLaon(ラン)のネウマ(黒字)では porrectusの3音目にエピゼマが付き、その下に指示文字“a”が書かれている。
これは3音目の後にaugete(アウジェーテ・長く)間をとるという指示文字。
この曲は第八旋法(変格)なのでfinalis(フィナリス・終音)ソよりも低く音が伸びている。

c. 分離により第一音を強調するパターン
(p.235、3段目)
alle-lu-iaのleの上に付けられたSt.Gallenのネウマ(赤字)
1音目の後が切れて、実質上virga+torculusになっている。
(ちなみに、次のluの上の赤字ネウマはtorculusの変化形で全体を流さず全部の音をゆっくり長くとる。
前のalの上の赤字の「p」に似たネウマは、virgaの先を丸めた形(=liquescent)
子音“L”をしっかり発語させる。)

2)pes subbipunctus (ペス・スプビプンクティス)
pes+sub(下)+bi(2・繰り返す)+punctus、ぺスの下に点ふたつ、と言う意味
下から上へ上がって2つ目3つ目の音が降りてくる。
(pesに2つ以上の下降音が続く場合の総称としてはpes subpunctis( ペス・スブプンクティス)と言う。)

すべて軽いパターン(基本)
(p.275、3段目)
me-umのmeの上につけられたSt.Gallenのネウマ(赤字)
直前に書かれた指示文字 “e”はequaliter(エクアリテル)、
前の音と高さが同じと言う意味。
上に書かれた“c”(チェレリテル・軽く)は、
2音目も軽く(pesだと基本は2音目が長くなるので)するようにとの指示文字。
  
以下はすべてを軽くしないパターン
分離による第一音の強調
(p.38、1段目)
sci-e-tisのe-の上に書かれたネウマ(赤字)
エピゼマ付virga(ヴィルガ)+climacus(クリマクス)の形で書かれているが、
“1つの音節”に対して書かれているので1つのネウマとしてとらえる。

エピゼマを付けることによって第2音を強調するパターン
(p.300、3段目)
ut e-ru-as(導き出す)のアクセントのある音節e-に付けられたネウマ(赤字)
ぺスにあたる部分にエピゼマが付いてドミナントでもある2音目が長くなる。
ちなみに、-asの上に書かれた2つのペス・スプビプンクティスの1つ目の上の“cm”はC(チェレリテル・軽く)+m(mediocriterメディオクリテル=(モデラート)の意。
“c”速くするのだが“m”それほど速くでもない。
2つ目は何も書いてないので軽く流す。

最後(4つ目)の音を長くするパターン
(p.19、1段目)
De-usのusに付けられた2つのペス・スプビプンクティス
pes+punctum+tractulusで書かれている。4つ目の音がtractulusで長くなる。
(5段目のe-iusのiusにつけられた2つのペス・スプビプンクティスも同じパターン。
ちなみに、上のLaon(ラン、黒字)では、トルクルス+ウンチーヌスの形で書かれ、3音目を長くさせない為に“n”(necnon=No)を付けてある。
ちなみに、「一番低い音で分離している場合は分離させない」という法則があるがこれは来年度で履修予定。)

前半2つを長くするパターン
(p.286、7段目、最後の段)
Domi- ne: のmiに付けられたSt.Gallenのネウマ(赤字)
Pes(ぺス)の部分を流れないpes quadratus(ペス・クワドラートス)にする。
前半2音を長く、後半2音を軽く。

後半2つを長くするパターン
(p.550、4段目)
aedi-fi-caboのboの上に書かれているSt.Gallenのネウマ(赤字)
torculus(トルクルス)の3音目にエピゼマを付け、
tractulus(トラクトゥルス)を足す。急激なリタルダンドのようになる。
上のLaon(ラン、黒字)では、
トルクルスとウンチヌスの間にa(augete長く)をつけて表現している。

後ろ3音が長いパターン
pes(2音で構成、2つ目が長い)+tractulus(低い・引く)を2つ。
(p.560、1段目)
affli-cti-o-nisのoに付けられたSt.Gallenのネウマ(赤字)
pes+tractulus2つ(その上の指示文字はsursum( 高く)か?
下に書かれた指示文字はI(inferius・低く)と思われる。)
続くnisの上に付けられたpes subbipunctusには第5音が続いており、pes subbipunctus resupinus(最後の音が上がる)というネウマ。

4音全部が長いパターン
pes quadratus(ペス・クワドラートス)+tractulus2つ。
(p.44、5段目)
fe-rumのrumに付けられたSt.Gallenのネウマ(赤字)

3)scandicus flexus
上って行くscandicus+4つ目の音がflexus(下がる)
<詳細は次回の講義にて>

4)torculus resupinus
torculus+4つめの音がもう一度上がる
<詳細は次回の講義にて>

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1)通常常唱(Ordinarium)第4番のミサ
(GRADUALE TRIPLEX p.725~)
IN FESTIS APOSTOLORUM(聖徒の祝日のミサ)

<Kyrie> (p.725)
最初のKyrie*までは先唱者が歌う。以降は複縦線まで毎を左右で交互に歌う。
複縦線の下に書かれている“bis”は、代にヴァチカン公会議以降、“2回歌う”と決められて以降のもので、それ以前は3回歌われていた。 (講座では古来のとおり3回で歌う)
最後のKyrieは*までを1Choir、そのあと**までを2Choir、
**以降eleisonは全員で歌う。

<Gloria> (p.725-p.726)
最初のGloria inexcelsis Deoまでを先唱者が歌う。以降は交互に歌う。
最後のAmenは全員で。

表現上の注意:
p.725最下段、a-gimusのmusの、テヌート付四角譜は、
clivisにteneteがついたもの。両方の音を長くとる。
p.726の“Deus Pater”“Iesu Christe”“Filius Patris”
“Qui tollis peccata mundi”は途中で切れずに1続きのフレーズとして歌う。

<Sanctus> (p.727)
最初のSanctusは先唱者が歌う。次のSanctus以降は全員で歌う。

<Agnus Dei> (p.727)
最初のAgnus Dei*までは先唱者が歌う。以降は全員で。Kyrieのように3回歌う。

表現上の注意:
ピタゴラス音律の長3度は広めに、高くとるように。

2)クリスマスの固有唱(Proprium) (p.47~)
日中のミサ Ad Missam in Die
第七旋法。Gloria Patriの部分は第七旋法のものを使う。

(p.47~48)Introitus入祭唱 (イザヤ 9:6; 詩編97) VII(第七旋法)
2回繰り返して歌われるが、その間にPs.(詩編)をはさんで歌われる。
詩編の部分だけが続けて書かれおり、詩編の最後に必ず歌われる三位一体を賛美する一節(Gloria Patri~)は旋法毎に歌うもの決まっており、同じ旋法の曲では同じものが使われるので、巻末にまとめて載せられている(p.824)

p.48、2段目、Ps.(詩編)の
最初のcantate Domino canticum novum:までは先唱者が歌う。
続くquiから後は全員で歌う。

p.824、4段目のVII(第七旋法)のGloria~
最初のGloria~Sanctoまでは先唱者が歌う。その後は全員で歌う。
Amenまで歌ったらp.47へ戻る。(2段目Angelusまでで終わり。)

(p.48、4段目~p.49、2段目)Graduale(昇階唱) V(第五旋法)
Iderunt omnes*までは先唱者が歌う。その後は全員で。
最後まで歌ったら最初に戻り、
6段目の二縦線の(V)が付いているところまで歌って終わる。

(p.49、3段目~) Alleluia(アレルヤ唱) II(第二旋法)
この楽譜は「ヘ音記号」
最初のAlleluia, 句分線までを先唱者が歌う。その後は最初から全員で歌う。
最後にまたAlleluiaを最初に戻って歌う。
(大昔、500年以上前はAlleluiaに戻らずSequentia(続唱)を歌っていたが、16世紀以降は廃止され、Alleluiaに戻って歌うことになった。(ジョスカン・デ・プレ等の時代にはまだSequentiaを歌っていた。)

歌詞の意味:
「アレルヤ、聖なる日が私達を照らした。
来なさい、諸国の人々よ。そして主を拝みなさい。
なぜなら、今日 偉大なる光が 地上に降りてきたのだから。」

表現上の注意:
3段目、Al-le-lu-iaのluの四角譜の、上側の小さな音符は、元々はpesの上の部分が欠けたもの。
Lu-iaのiの音(経過音で強く発音しない)をそこで歌う。
luのまま上の音に上がらず、上の音ではiを歌うように。

(p.49、最後の段~Offertorium(奉納唱)は次回の講義にて)

(MM)
by fonsfloris-k | 2011-11-26 13:00 | 講座レポート
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