Heinrich Isaac このグループは総合講座ですので、グレゴリオ聖歌とポリフォニーの両方を歌います。 今年はどの講座も「聖母マリアのお告げの祝日」にまつわる歌を勉強します。 この講座では、この祝日のミサ固有唱のグレゴリオ聖歌とイザークのChoralis Constantinus中のポリフォニー作品を学んでいきます。 〈配布資料〉 A4 2枚 ・3月25日聖なるおとめマリアのお告げのミサのテキスト [入祭唱:和訳 Collecta集祷文:ラテン語+和訳 Evangelium:ラテン語+和訳] ・入祭唱 Rorate caeli グレゴリオ聖歌(Graduale Novum版)A3 3枚 ・Rorate caeli(入祭唱)とEcce virgo concipiet(拝領唱)の3種類の楽譜 ・Isaac のRorate caeli と Ecce virgoのポリフォニー(2枚) →イザークの楽譜は半分に切ったあと、のりで貼り合わせて製本しておいてください! ①学ぶ曲の解説・説明 Choralis Constantinus は、一年のミサの固有文唱のポリフォニー作品集で、たいていは入祭唱と拝領唱が作曲されていますが、たまに(重要な主日・祝日では)、アレルヤ唱やセクエンツァ(続唱)のポリフォニーも作られています。 今回の「聖母マリアのお告げの祝日」用には、入祭唱・続唱・拝領唱が作られています。続唱は今日配布した楽譜の元の写本には入っておらず、別の写本に入っているので、後日配布します。 今年は、この入祭唱・続唱・拝領唱の3曲のグレゴリオ聖歌とポリフォニーを学んでいきます。 イザークはフランドル出身で、インスブルックの宮廷作曲家となり、その後フィレンツェのメディチ家の宮廷音楽家となり、さらに神聖ローマ帝国皇帝マクシミリアンに仕えました。奥さんはイタリア人ですし、非常に国際的に活躍した作曲家です。今回の曲のラテン語テキストを何語風に発音するかというのはなかなか悩ましいですが、 マクシミリアンはブルゴーニュとも繋がりが深く、集められた歌手・音楽家もフランドルからの人たちが多かったであろうことは想像できます。そしてやはりイザークのルーツはフランドルですので、今回はフランス語風の発音で歌います。 ただし、この曲集はその名の通りコンスタンツ(南ドイツの町)の教会の依頼で作られ始めたわけですが、この聖堂の歌手たちはおそらくほとんどがドイツ人だったと思われます。この曲集は未完のままイザークは亡くなり、弟子のゼンフルが完成させ出版しようとしたが死去。さらにその後1555にやっと出版されました。イザークが死去したのは1517なので随分後のことです。 この曲集は、第1~3巻まであり、パートブック、つまりパート譜の形で出版されています。 当時はこのパート譜を買ったあと、それを見てクワイヤブックに書き直し、演奏していました。そのようにクワイヤブックに書き直されたものの一つが今回使用する写本で1575年のものです。 ・Introitus Rorate Caeli Liber Usalisではこの祝日のIntroitusはVultum tuum ですが、Choralis ConstantinusではRorate Caeliになっています。 Rorate Caeli は一般的には待降節の第4主日のIntroitusとしてよく知られています。 ②グレゴリオ聖歌を歌う テキストをフランス風の発音で音読し読み方の確認。全体的に口の中は狭く前の方で響かせましょう。 3つの楽譜 ザンクトガレンの写本(10C初頭) Graduale Pataviense(1511) Graduale Novum を見比べ、歌いました。 まず冒頭のメロディーの4つ目の音について、シb なのか シ なのかはたまた ド なのか。色々な時代や地域によって違いがありました。できるだけ古いメロディーを復元しようと試みているGraduale Novumでは、シになっています。これはおそらくラン系の写本の指示文字S(surusm)などによるものと思われますが、14世紀くらいにはシb で歌われていた可能性が高く、さらにGraduale Patavienseでは ド になっています。ドイツ系の写本ではこのパターンが多く、イザークのポリフォニー版の先唱部分も短3度です。 まずは、Graduale Novum版を歌いました。 問題の箇所は シ で歌いました。ラン系(以下L)やザンクトガレン系(以下SG)のネウマを見比べ参考にしつつ、メロディーの動きをチェックしていきました。 〈ポイント〉 ・SGではクリビスでも、Lではウンシヌス2つで分けて書かれているところがありますが、そういうところは少しなだらかに降りていきましょう。 ・クィリスマ(SG)があるとことろは、その前の音をしっかり響かせてその勢いを使って昇っていきましょう。 ・Justumの部分エピゼマ(SG)、2つのウンシヌスの間のaugete(L)に注意、ここはゆったり。その次のクリマクス(SG)は素早く。 ・terraのterとgerminetのnetは同じ形でファソファレですが、ここはSGのネウマを参考にterraはさらっと、germinetはゆったり、次の重要な言葉Salvatoremに備えます。 ・Salvatoremのvaと toのトルクルス(SG)、vaのように丸っこいネウマは流れて素早く、toのように直線的なものはゆっくり、Lのネウマも同じことを表しています。よく確認しておきましょう。 ネウマは微妙なニュアンスを表現しています。各ネウマについてしっかり復習して覚えておきましょう。 次にGraduale Pataviense版を歌いました。 このGradualeは1511年のドイツのもので、イザークとほぼ同時代のものです。 ・ドイツの独特のネウマです。一つ一つの音がきっちり表されていて、SGのネウマのような微妙なニュアンスは分からなくなっていますが、ただ、このくらいの時代までは、楽譜を介さない口伝の伝統がきっと残っていたはずです。見た目だけにとらわれないで、音の動きやメロディーの方向性を意識しながら歌いましょう。 ・前述の通り、Rorateで、ラ-ドの短3度の特徴的なジャンプがありますが、こういう旋律の形はポリフォニーにも生きています。チェックしておきましょう。 ③イザークのポリフォニーを歌う ・このクワイヤブックでは、Sup(左上)・Bass(左下)/Ct(右上)・T(右下)の配置です。 ・グレゴリオ聖歌より全体を4度上げて記譜されている。しかし、第1旋法であることを忘れないようにしましょう。(記譜上のソがレになる書き方。b がファ。) ・まずCtのメロディーから全員で確認していきました。譜読みの際、ソルミゼーションを試みて、へクサコードがシフトしている感じを確認後、言葉を付けて通しました。 ・Tenorはいきなり言葉付きで一度全員で歌い、その後、男声T・女声Ctで合わせました。 ・次にBを言葉付きで1度通したあと、3声で合わせ。(注:Celi のli のリガトゥーラの真ん中の音はSolです) ・最後にSを通し、4声であわせました! 初回からたくさんのことを学びましたね。 次回は、アシスタント講座で、今回の復習を中心に進めていきます。また女声のパートを決める予定です。 アンサンブル練習を深めることができるように、各自で復習をしておきましょう。 (Y.N.)
by fonsfloris-k
| 2015-05-16 13:00
| 講座レポート
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