2015年度古ネウマ研究 第6回
【総括】 ・今日は久々の哲郎先生の回でした。 ・前半では新たに13. stropha, 14. distropha, 15. tristropha, 16. trigon, 17. bivirga, 18. trivirgaを学びました。 ・後半では、来年2月の発表会で歌う予定の聖歌 “Tollite portas” を練習しました。 【前半】 ○13. stropha, 14. distropha, 15. tristropha ・stropha (ストローファ) はアポストロフィのような記号(’)。軽い表現。 ・2個連なるとdistropha (ディストローファ)、3個連なるとtristropha (トリストローファ) になる。いずれも「同音の反復」を示すネウマ。 ・古ネウマの研究が進む以前は、ディストローファやトリストローファは「つなげて」歌われていた (ソレム唱法、同じ音で伸ばしていた)。しかし、古ネウマの研究によってこれらが反復して歌われるのは明らか。 →例えば、ディストローファの1個目がエピゼマ無し、2個目がエピゼマ付き、というような場合、1個目は軽く、2個目は重くというニュアンスの違いが生ずる。反復して歌えばその違いを表現できるが、つなげて歌ってしまうと違いは表現できない。(例 172,2) ・反復して歌うときのポイントは、声の強・弱を交互にすること。音と音の間が無音にならないように。 ・ストローファは、ディストローファに先行して使われることが多い(低い1音と、高い同度2音)。また、旋律の間に入り、前後をつなぐような役割を持つこともある。(例 265, 8) ○16. trigon ・トリゴン trigonは三角形状の3つの点から成るネウマ。同度2音と低い3音目からなり、軽い動きを示す。(ただし、始めの2音の音程関係については実際のところ不明確で、研究者によって意見が異なる) ・旋律の頂点でトリゴンが書かれている場合があり、その部分は声を張らずに軽く歌うべき。(例 36, 9) ・点が横棒(トラクトゥルス)になると、その部分を重く歌う。下行旋律での第3音強調の例が多いが、この場合3音目がトラクトゥルスになる。 ○17. bivirga, 18. trivirga ・2つあるいは3つのヴィルガ virga から成るネウマ。2つの場合ビヴィルガ bivirga、3つの場合トリヴィルガ trivirga。 ・ディストローファやトリストローファと同様、同音の反復を表す。ただし、軽く歌うのではなくしっかり歌う。 ・しっかり歌うことを強調する場合には、両音にエピゼマが付く。片方に付くことはない。 ~休憩~ 【後半】 ・発表会のテーマは「聖母のお告げの祝日(3/25)」。ミサ固有文については、トリプレクスの553頁に掲載。“In Annuntiatione Domini”「主のお告げ」とあるが、これは20世紀以降の表現で、伝統的には “In Annuntiatione B. M. V. (Beatae Mariae Virginis)”「聖母のお告げ」。 →古ネウマ研究のクラスではグラドゥアーレ “Tollite portas” (25頁) を歌う予定。 ・第2旋法のグラドゥアーレ(Graduale、昇階唱)。類似したメロディーのグラドゥアーレがたくさんある。 →27, 30, 32, 33, 38, 42, 72, 101, 155, 347, 427, 428, 455, 510, 520, 646, 670(トリプレクスの掲載ページ) ・2段目冒頭 “stras” の音節上、スカンディクス(3音目にエピゼマ)とクリマクス(celeriter付き)が続けて出て来る。ヴィルガが2個並ぶのでビヴィルガのようにも見えるが、そうではないので注意。 ・反対に、4段目冒頭には、通常のヴィルガと第1音にエピゼマの付いたクリマクスが続けて出て来る。ここは、結果的にビヴィルガのような表現になる。(同じ音でしっかり繰り返す) 【次回 (11/14)】 ・次回以降は、oriscus と oriscus を含むネウマ(pressus や virga strata)などを学んでいくことと思います。これらは、「特殊ネウマ」あるいは「装飾ネウマ」と呼ばれるジャンルのネウマで、通常のネウマとは少々異なる特殊な演奏法、装飾的な歌い方がなされていたのではないかと考えられるネウマ群です(実を言うと、今回学んだトリゴン trigon も特殊ネウマに分類されることがあるのですが…笑)。哲郎先生の歌い回しをよく聴いて、声の使い方なども併せて学んでいけると良いと思います。 ・また今回の講座から、発表会で歌う予定のグラドゥアーレを練習し始めました。一般的にグラドゥアーレにはメリスマ部分が多く、その分ネウマも多く複雑です。予習復習をして、今のうちからネウマと旋律に少しずつ慣れていくと良いでしょう。 (K.W.)
by fonsfloris-k
| 2015-10-17 10:00
| 講座レポート
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